- 国民生活センターが公表した相談件数の推移と実際の相談事例
- 点検商法の手口と、正規の点検との見分け方
- その場で断るための具体的な文例と相談窓口

「無料で点検します」と業者が訪ねてきた。
断っていいのか、本当に必要な点検なのか判断がつかない。
結論から言えば、依頼していないのに突然訪問してくる点検には応じる必要はありません。
国民生活センターも「突然訪問して点検を持ち掛ける業者には安易に対応しないように」と呼びかけています。
給湯器の点検商法に関する相談は年々増えており、2018年度の206件から、2023年度は12月末までで1,099件と5年で5倍以上になっています。契約当事者の7割以上が70歳以上です。
この記事では、公表されている相談事例と手口を整理したうえで、断り方の文例、契約してしまった場合の対処、正規の点検との違いまでをまとめます。


いま業者が来ている方は「その場で断るための文例」、すでに契約した方は「契約してしまった場合」をご覧ください。
結論|突然の訪問点検には応じない
判断に迷ったときの原則は3つです。
- 依頼していない訪問点検は断ってよい
- その場では契約しない
- 不安なら、契約先のガス事業者やメーカーに確認する
国民生活センターは、電話等で連絡があって訪問された際にはインターホン等で断るよう案内しています。玄関を開ける必要すらありません。
なぜ断って問題ないのか
エコキュートの点検は、法律で義務づけられた定期点検ではありません。メーカーや施工業者が行う任意のサービスであり、第三者が突然来て実施しなければならないものではありません。
本当に点検が必要な状態であれば、購入した販売店やメーカーの窓口に自分から連絡すれば済みます。
相談件数は5年で5倍以上|公表されているデータ
国民生活センターは2024年2月21日、給湯器の点検商法についてトラブルが急増しているとして注意喚起を発表しました。


【表1】給湯器の点検商法に関する年度別相談件数
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2018年度 | 206件 |
| 2019年度 | 241件 |
| 2020年度 | 245件 |
| 2021年度 | 335件 |
| 2022年度 | 561件 |
| 2023年度(12月31日までの登録分) | 1,099件 |
出典:国民生活センター「給湯器の点検にご注意ください−70歳以上の高齢者を中心にトラブル急増!−」(2024年2月21日公表/確認日:2026年8月1日)。全国の消費生活センター等に寄せられた相談を集計したPIO-NETのデータです。
2023年度は2022年度の同時期と比べて約3倍に増えており、契約当事者の7割以上が70歳以上とされています。
高齢者が狙われている
この数字が示すのは、高齢者が集中的に狙われているという事実です。日中に在宅していることが多く、機器の知識を持たない層が対象になりやすいためと考えられます。
離れて暮らす家族がいる場合は、この記事の内容を共有しておくと予防につながります。
実際に寄せられている相談事例
国民生活センターが公表している相談事例です。いずれも実際に消費生活センターに寄せられたものです。
- ガス会社の人だと思って点検を依頼し、交換の契約をしたが解約したい
- 自治体から委託されたという業者から、給湯器の交換が必要と言われた
- 安くなると言われて契約したが、高額に思ったので解約したい
- 無料点検と言われて点検してもらい、給湯器の交換を勧められて契約したので解約したい
相談事例からみえる3つの特徴
国民生活センターは、これらの事例に共通する特徴を次のように整理しています。
- 突然の訪問で点検を持ち掛ける
- 点検後に「このままでは危険」などと不安にさせる
- 「今契約すれば割引」と契約を急がせる
この3つが揃ったら、その時点で警戒してください。順番も含めて、典型的な流れです。
身分を偽る手口
電話口で「自治体から委託を受けた」「契約中のガス会社から依頼された」などと名乗るケースが確認されています。
自治体が個別の家庭の給湯器点検を民間業者に委託することは、通常ありません。ガス会社を名乗られた場合も、その場で信じず、契約しているガス会社の正規の窓口に自分から電話して確認してください。
相手が伝えてきた電話番号にかけ直すのではなく、検針票や請求書に記載された番号にかけることが重要です。
正規の点検と点検商法の見分け方
すべての訪問が悪質というわけではありません。違いを整理します。
【表2】正規の点検と点検商法の違い
| 確認する点 | 正規の点検 | 注意が必要なケース |
|---|---|---|
| きっかけ | 自分で依頼した/事前に案内が届いていた | 依頼していないのに突然訪問・電話 |
| 名乗り方 | 社名・担当者名を名乗り、身分証を提示する | 「自治体から委託」「ガス会社から依頼」と曖昧に名乗る |
| 点検の目的 | 状態の確認と報告 | その場での契約が前提 |
| 説明の仕方 | 状態を事実として説明する | 「このままでは危険」と不安をあおる |
| 契約の進め方 | 見積書を渡し、検討期間を置く | 「今日契約すれば割引」と急がせる |
| 書面 | 会社の正式な見積書・契約書 | 書面が簡素、控えを渡さない |
確認したい3つの質問
相手が正規かどうかを確かめるには、次の3つを聞けば十分です。
- 「会社名と担当者のお名前、連絡先を教えてください」
- 「どちらからの依頼で来られましたか」
- 「書面を置いていってください。検討してからこちらから連絡します」
正規の事業者であれば、この3つに問題なく答えられます。答えを渋る、話をそらす、その場での決断を求めてくる場合は、応じないでください。
「無料点検」がすべて詐欺というわけではない
メーカーや施工業者が、保証期間中のサービスとして無料点検を行うことはあります。ただしその場合は事前に案内が届く、または自分が加入している保証にもとづくものです。
心当たりがなければ、その場で判断せず、保証書や契約書類を確認してください。
その場で断るための具体的な文例
曖昧な断り方は、押し問答を長引かせます。短く、理由を説明せず、はっきり断るのが最も効果的です。
インターホンで断る
- 「結構です。お引き取りください」
- 「点検は必要ありません。失礼します」
- 「うちは頼んでいません。お帰りください」
国民生活センターも、電話等で連絡があって訪問された際にはインターホン等で断るよう案内しています。玄関を開ける必要はありません。
玄関を開けてしまった場合
- 「家族が決めることなので、私では判断できません」
- 「今は対応できません。お引き取りください」
- 「必要になったら、こちらから連絡します」
「検討します」は避けてください。相手に再訪問の口実を与えます。
点検を受けてしまい、契約を勧められた場合
- 「その場では決めません。書面を置いていってください」
- 「他社の見積りも取ってから決めます」
- 「家族に相談してから返事します」
国民生活センターも「その場では契約せず、家族等に相談してから決めましょう」としています。この一言を言えるかどうかで結果が変わります。
電話での勧誘を断る
- 「必要ありません。今後の電話もお断りします」
- 「どちらの会社ですか。折り返しますので番号を教えてください」
折り返しを提案すると、身元を明かせない相手は引き下がることが多くなります。ただし相手が伝えた番号ではなく、公式サイトや検針票の番号にかけ直してください。
それでも帰らない場合
特定商取引法では、訪問販売において消費者が契約を締結しない意思を示した場合、その後の勧誘を継続することは禁止されています。
しつこく居座る、威圧的な態度を取るといった場合は、その場で警察(110番)に連絡してください。身の安全が最優先です。
契約してしまった場合|クーリング・オフ
契約してしまっても、一定期間内であれば無条件で解除できる場合があります。
クーリング・オフの期間
特定商取引法では、訪問販売による契約について、法定書面を受け取った日から8日以内であればクーリング・オフができるとされています(消費者庁「特定商取引法ガイド」)。
| 取引の種類 | クーリング・オフ期間 |
|---|---|
| 訪問販売 | 8日間 |
| 電話勧誘販売 | 8日間 |
| 特定継続的役務提供 | 8日間 |
| 訪問購入 | 8日間 |
| 連鎖販売取引 | 20日間 |
| 業務提供誘引販売取引 | 20日間 |
出典:消費者庁「特定商取引法ガイド」(確認日:2026年8月1日)
起算日は「書面を受け取った日」
重要なのは、契約した日ではなく、法律で定められた事項が正しく記載された書面を受け取った日から起算する点です。
事業者は、契約の申込みを受けたときまたは契約を締結したときに、法律で決められた事項を記載した書面を渡す義務があります。書面を渡されていない、記載に不備がある場合は、8日を過ぎていても解除できる可能性があります。あきらめずに相談してください。
通知の方法
クーリング・オフの通知は書面のほか、電磁的記録(メールなど)でも可能とされています。証拠が残る方法で行い、控えを保管してください。
具体的な書き方や手続きは、消費生活センターに相談すれば案内してもらえます。
工事が始まっていても解除できる場合がある
クーリング・オフが成立すれば、原則として損害賠償や違約金を請求されることはありません。すでに工事が行われていても、原状回復の費用は事業者の負担とされています。
「もう工事したから解約できない」と言われても、その場で受け入れず相談してください。
相談窓口|消費者ホットライン188
迷ったとき、困ったときの相談先です。
消費者ホットライン 188(いやや!)
局番なしの188にかけると、最寄りの市区町村または都道府県の消費生活センター等につながります。国民生活センターが案内している共通の3桁番号です。
- 契約してしまい、解約したい
- クーリング・オフの手続きを知りたい
- 業者の対応が悪質だと感じる
- これは詐欺なのか判断がつかない
いずれの段階でも相談できます。契約前の「これは大丈夫か」という相談も受け付けています。
警察相談専用電話 #9110
しつこい訪問や威圧的な言動など、身の危険を感じる場合は警察に相談してください。緊急の場合は110番です。
契約先のガス会社・電力会社・メーカー
「〇〇から依頼されて来た」と言われた場合は、その会社の正規の窓口に自分から確認してください。番号は検針票、請求書、公式サイトで調べます。
相談するときに用意しておくもの
- 契約書・見積書・領収書などの書類
- 業者の社名、担当者名、連絡先
- いつ、どのようなやり取りがあったかのメモ
- 支払い方法と支払い済みの金額
記録が残っているほど手続きが早く進みます。やり取りの直後にメモを取っておくことをおすすめします。
本当に点検やメンテナンスが必要なとき
点検商法を警戒するあまり、必要な手入れまで避けてしまうのは本末転倒です。正しい窓口を知っておいてください。
自分でできるメンテナンス
日常的な手入れは、業者に頼まなくても自分でできます。
- 貯湯タンクの水抜き:年2回程度が目安。手順は取扱説明書に記載されています
- 逃し弁の動作確認:レバーを操作して水が出るか確認する
- 漏電遮断器の動作確認:テストボタンを押す
- 浴槽フィルターの清掃:月1回程度
- ヒートポンプ周辺の清掃:落ち葉やゴミを取り除く
「水抜きをします」と訪問してくる業者がいますが、水抜きは取扱説明書の手順に従えば自分で行える作業です。
業者に頼むべきケース
- エラーコードが繰り返し出る
- 水漏れしている
- 異音がする、運転音が明らかに大きくなった
- お湯が出ない、沸き上げができない
- 高所に設置されていて自分で作業できない
この場合の連絡先は、保証期間内ならメーカーまたは施工業者、保証期間外ならメーカーの修理受付センター、購入した販売店、給湯器の専門業者です。
依頼先の選び方
自分から依頼する場合も、業者選びの基準は必要です。見積りの内訳が書面で出るか、保証の年数と条件、自社施工か下請けかを確認してください。
主要12社の保証・対応エリア・受付時間を比較した記事を用意しています。
症状別の修理費用の相場はエコキュートの修理費用|症状別の相場と修理か交換かの判断基準で、メーカー公表の概算料金をもとに整理しています。相場を知っておくこと自体が、高額請求への備えになります。
高齢の家族を守るために
契約当事者の7割以上が70歳以上という数字を踏まえると、本人だけでなく家族側の備えが有効です。
家族で共有しておきたいこと
- 「点検に来た」と言われても、その場で契約しない
- 必ず家族に連絡してから決める
- 会社名と担当者名、連絡先を控えておく
- 困ったら188に電話する
物理的な対策
- 「訪問販売お断り」のステッカーを玄関に貼る
- インターホンの録画機能を活用する
- 固定電話を留守番電話設定にしておく
- 貯湯タンクの周囲を見えにくくする(型番を読み取られないため)
型番が外から見えると、「〇〇年製の機器は危険です」と具体的に言われて信じやすくなります。
もし契約してしまっていたら
責めずに、まず書類を確認してください。法定書面を受け取った日から8日以内ならクーリング・オフができます。書面に不備があれば、8日を過ぎていても解除できる可能性があります。188に相談してください。
エコキュートの点検詐欺に関するよくある質問(FAQ)
まとめ|断ることは失礼ではない
覚えておくべきことは4つだけです。
- 依頼していない訪問点検は断ってよい(インターホンで十分)
- その場では契約しない(「家族に相談してから」で足りる)
- 「〇〇から依頼された」は自分から正規の窓口に確認する
- 契約してしまったら8日以内にクーリング・オフ(起算日は書面を受け取った日)
給湯器の点検商法の相談は、2018年度の206件から2023年度は12月末までで1,099件へと5年で5倍以上に増えています。契約当事者の7割以上は70歳以上です。離れて暮らす家族がいる方は、この内容を共有しておいてください。
一方で、必要な点検や修理まで避ける必要はありません。自分から依頼するのであれば、見積りの内訳と保証条件を確認したうえで、複数社を比べれば問題は起きにくくなります。相場を知っておくこと自体が、高額請求への備えになります。
参照した出典一覧
| 出典 | 内容 | 確認日 |
|---|---|---|
| 国民生活センター「給湯器の点検にご注意ください−70歳以上の高齢者を中心にトラブル急増!−」(2024年2月21日公表) | 年度別相談件数、相談事例、手口の特徴、消費者へのアドバイス | 2026年8月1日 |
| 国民生活センター「不安をあおって契約させる 給湯器の点検商法に注意」 | 点検商法の手口 | 2026年8月1日 |
| 消費者庁「特定商取引法ガイド」 | 訪問販売の定義、クーリング・オフの期間と書面の交付義務 | 2026年8月1日 |
| 消費者ホットライン 188(消費者庁・国民生活センター) | 相談窓口 | 2026年8月1日 |








