- エコキュートの水圧が弱いのは故障ではなく仕組み上の理由であること
- 「高圧」の呼び方と数値はメーカーで違うこと(メーカー公表値で比較)
- 交換せずに改善する方法と、高圧タイプへ交換する場合の注意点

シャワーの勢いが弱い。
台所でお湯を使うと、さらに弱くなる。
エコキュートのシャワーが弱いと感じるのは、多くの場合そもそもの仕組みによるもので、故障ではありません。日立は公式サイトで「エコキュートはお湯を貯めるタンクを保護するため、タンク内の水圧を減圧して給湯している。勢いが弱くなるのはタンク内の水圧が低いことが原因」と説明しています。
ガス給湯器は水道の圧力をほぼそのまま使うのに対し、エコキュートはタンク内で減圧してから給湯します。この違いが体感の差になります。
この記事では、メーカー公表値をもとに圧力の目安を整理し、交換せずに改善する方法と、高圧タイプへ交換する場合の判断材料をまとめます。
急に弱くなった場合は「水圧が急に弱くなった場合」をご覧ください。故障や凍結の可能性があります。
結論|水圧が弱いのは仕組み上の理由


タンクを守るために減圧している
エコキュートは沸かしたお湯を貯湯タンクにためておきます。タンクは高い圧力に耐える設計になっていないため、減圧弁で水圧を下げてから給湯する仕組みです。
つまり水圧が低いのは設計上の仕様であり、設置直後から弱いと感じる場合、それは故障ではありません。
ガス給湯器との違い
| エコキュート(減圧弁方式) | ガス給湯器 | |
|---|---|---|
| お湯の作り方 | 夜間に沸かしてタンクにためる | 使うときに瞬間的に沸かす |
| 水圧 | タンク保護のため減圧される | 水道の圧力をほぼそのまま使える |
| 2か所同時使用 | 勢いが落ちやすい | 影響を受けにくい |
ガス給湯器から乗り換えた方が「弱くなった」と感じるのは、この構造の違いによるものです。
改善する方法は3つ
- 設備側で改善する(シャワーヘッド、配管、止水栓の調整)
- 高圧タイプに交換する(給湯圧力が高い機種を選ぶ)
- 水道直圧給湯方式に交換する(減圧弁を通さない方式)
なぜ水圧が弱いのか|減圧弁方式の仕組み
減圧弁方式とは
日立の説明によれば、減圧弁方式は給湯温度を調節するため、タンク内のお湯と水を混ぜてシャワー・蛇口に給湯する方式です。国内のエコキュートの多くがこの方式を採用しています。
タンク内の圧力が上限になるため、蛇口の先で得られる水圧もそれ以上にはなりません。
2か所同時に使うとさらに弱まる
台所でお湯を使いながらシャワーを浴びると、限られた圧力と流量を分け合うことになります。日立の試験値では、2か所同時使用時のシャワー流量は減圧弁方式で約7〜10L/分とされています(給水元圧500kPa、配管径20A、5m直管、1階での使用)。
2階・3階では特に弱くなる
高い位置ほど水圧は下がります。もともと減圧されているところに高さ分の損失が加わるため、2階以上の浴室では体感差が大きくなります。
給水元圧そのものが低い場合もある
地域や住宅の条件によって、水道の元圧が低いことがあります。この場合はエコキュートを高圧タイプに替えても十分な性能が得られないことがあります。パナソニックも「給水圧力が低いと十分な性能が得られないことがあります」と注記しています。
お湯だけでなく水も勢いが弱いなら、機器ではなく給水側の問題です。水道局や指定給水装置工事事業者に相談してください。
給湯圧力の目安|メーカー公表値
メーカーが公表している数値を整理します。呼称と実際の数値がメーカーで異なる点に注意してください。


【表1】メーカー公表の給湯圧力
| メーカー・方式 | 公表されている圧力 | 補足 |
|---|---|---|
| 日立|減圧弁方式(同社製品) | タンク圧 170kPa | 水道直圧給湯との比較条件として公表 |
| パナソニック|HE-J37KQS(2020年発売) | 170kPa | ウルトラ高圧の比較注記 |
| パナソニック|HE-J37NQS(高圧) | 180kPa | 同上 |
| パナソニック|高圧・パワフル高圧の試験条件 | 給水元圧 300kPa | ウルトラ高圧ページの試験条件 |
| パナソニック|ウルトラ高圧の試験条件 | 給水元圧 400kPa | 同上 |
| 日立|水道直圧給湯 | 給水元圧500kPa時、減圧弁方式(170kPa)比で圧力約2.9倍 | 公式サイト |
出典:日立「水道直圧給湯」、パナソニック「ウルトラ高圧給湯」(いずれも確認日:2026年8月1日)。機種・年式により異なります。正確な数値は各機種のカタログ・仕様表でご確認ください。
流量で比べるとイメージしやすい
圧力の数値よりも、実際に出る湯量のほうが体感に近い指標です。各社が公表している試験値は次のとおりです。
| 条件 | シャワー流量 | 出典 |
|---|---|---|
| 日立|減圧弁方式・2か所同時 | 約7〜10L/分 | 日立公式 |
| 日立|水道直圧給湯・2か所同時 | 約12〜16L/分 | 日立公式 |
| パナソニック|高圧(HE-J37NQS)・1階 | 約12L/分 | パナソニック公式 |
| パナソニック|ウルトラ高圧(HE-JU37NQS)・1階 | 約17L/分 | パナソニック公式 |
※日立は給水元圧500kPa・配管径20A・5m直管・1階での使用、パナソニックは給水元圧300kPa(ウルトラ高圧は400kPa)・シャワー給湯温度42℃・ダイレクト出湯・配管16A・配管長15m5曲がり、という条件での試験値です。測定条件が異なるため、社をまたいだ単純比較はできません。
「高圧タイプ」の呼び方はメーカーで違う
この分野でもっとも誤解が多い点です。同じ「高圧」でも、メーカーによって指すものが違います。
パナソニックは3段階に分かれている
パナソニックは「高圧」「パワフル高圧」「ウルトラ高圧」の呼称を使い分けています。同社の注記では、高圧のHE-J37NQSが180kPa、比較対象の2020年発売機種が170kPaと記載されています。
つまり「高圧」と書かれていても、標準とほとんど変わらない場合があります。名称ではなく数値と流量で確認してください。
日立は方式そのものが違う
日立の「水道直圧給湯」は、減圧弁を通さずプレート式給湯熱交換器で水道水を瞬間的に沸かして給湯する方式です。タンク内の水圧の影響を受けないため、圧力の考え方が根本的に異なります。
カタログで確認すべき項目
- 給湯圧力(kPa)の数値
- シャワー流量(L/分)と、その測定条件
- 2か所同時使用時の値が示されているか
- 推奨される給水元圧
測定条件が書かれていない数値は比較に使えません。配管径、配管長、階数、給水元圧が揃って初めて比較になります。
水道直圧給湯という選択肢
水圧を最優先するなら、方式そのものを変える選択があります。
仕組み
貯湯タンクのお湯から熱だけを利用し、プレート式給湯熱交換器で水道水を瞬間的にお湯にします。タンクを介さないため、ほぼ水道の給水元圧のまま給湯されます。
公表されている効果
日立の公表値では、給水元圧500kPaの場合、同社の減圧弁方式(タンク圧170kPa)と比べてお湯の圧力が約2.9倍、お湯の量が約1.6倍になるとされています。
また3階でもシャワーが使えるとしています(浴槽の湯はりはタンクから給湯するため、3階での湯はりには別売の水流スイッチが必要)。
注意点
- 給水元圧300kPa以上が推奨されています。元圧が低い住宅では効果が限定的です
- 対応する機種が限られます
- タンクのお湯と混ざらないため飲用も可能とされていますが、水質基準に適合した水の使用など条件があります
自宅の給水元圧が分からない場合は、見積り時に業者に測定してもらってください。
水圧が急に弱くなった場合
ここまでは「もともと弱い」ケースです。以前は問題なかったのに急に弱くなった場合は、別の原因があります。
まず確認する4点
- 水も弱いか:お湯だけならエコキュート側、水も弱いなら給水側の問題です
- 止水栓が閉まりかけていないか:何かの拍子に動くことがあります
- シャワーヘッドが目詰まりしていないか:水垢の蓄積で流量が落ちます
- 冬季なら配管が凍結していないか:気温が上がるのを待ちます
ストレーナーの詰まり
給水配管には、異物を捕らえるストレーナー(フィルター)が設けられています。ここに水垢やゴミが詰まると流量が落ちます。清掃で改善する場合がありますが、位置と手順は機種によって異なるため取扱説明書を確認してください。
機器の不具合
混合弁や減圧弁の不具合でも流量が落ちることがあります。この場合は部品交換が必要です。症状別の費用はエコキュートの修理費用|症状別の相場と修理か交換かの判断基準で、メーカー公表の概算料金をもとに整理しています。
お湯が出ない・ぬるいといった症状を伴う場合はエコキュートのお湯が出ない原因と対処法もあわせてご覧ください。
交換せずに水圧を改善する方法
機器を替える前に試せることがあります。費用をかけずに体感が変わる場合もあります。
①シャワーヘッドを替える
もっとも手軽で効果が出やすい方法です。節水タイプのなかには、少ない流量でも勢いを感じられるよう設計されたものがあります。散水板の穴を細かくして水の速度を上げる仕組みです。
ただし製品によっては逆に流量が落ちるものもあります。「増圧」「低水圧対応」と明記されたものを選んでください。
②シャワーヘッドと配管を掃除する
散水板に水垢が詰まると流量が落ちます。クエン酸につけ置きすると改善することがあります。定期的な手入れで維持できます。
③止水栓の開き具合を確認する
浴室や洗面台の止水栓が全開になっていない場合があります。工事の際に絞られたままということもあるため、確認してみてください。
④同時使用を避ける
根本的な解決ではありませんが、台所と浴室の同時使用を避けるだけで体感は変わります。日立の試験値でも、2か所同時使用時のシャワー流量は大きく落ちています。
⑤配管の口径を確認する
給水・給湯配管が細いと流量が制限されます。パナソニックも「給水元圧が低い場合や給水・給湯配管が細い場合、出湯流量が少なくなることがあります」と注記しています。
配管の引き直しは工事を伴うため、機器の交換とあわせて検討するのが現実的です。
高圧タイプへの交換を検討する
設備側の対策で改善しない場合、機器の交換が選択肢になります。
交換を検討すべきタイミング
- 設置から10年以上が経過している(寿命の目安に近い)
- 故障や不具合が出ている
- 2階・3階の浴室で日常的に不便を感じている
- 家族が増え、同時使用の機会が増えた
水圧だけを理由に、まだ使える機器を交換するのは費用対効果が合いにくいのが実情です。寿命が近づいているタイミングで、あわせて高圧タイプを選ぶのが合理的です。
見積り時に確認すること
- 自宅の給水元圧(測定してもらう)
- 候補機種の給湯圧力と流量、その測定条件
- 2階・3階で使う場合の見込み
- 既存の配管を流用できるか、口径は足りるか
- 設置スペースに収まるか
とくに給水元圧の測定は重要です。元圧が低ければ、高圧タイプにしても期待した効果が得られません。パナソニックも日立も、この点を注記しています。
費用の目安
交換の総額は、工事費・撤去処分費を含めて370Lクラスでおおよそ35万〜55万円、460Lクラスで40万〜65万円が目安です(相場・目安。機種と設置条件で変動します)。高圧タイプや水道直圧給湯方式は、標準タイプより本体価格が上がる傾向があります。
国の補助金(給湯省エネ2026事業)が使える場合は、基本額7万円/台に性能加算3万円/台で最大10万円/台が交付されます。申請は登録された給湯省エネ事業者が行うため、依頼先が登録事業者かを確認してください。
高圧タイプの注意点
水圧が上がることには、いくつかの副作用もあります。
お湯の使用量が増えやすい
勢いが強くなるぶん、同じ時間シャワーを使うと湯量の消費が増えます。タンク容量が同じままだと湯切れしやすくなる可能性があります。
交換の際は、容量の見直しもあわせて検討してください。
本体価格が上がる
高圧タイプや水道直圧給湯方式は、標準タイプより本体価格が高くなります。補助金の対象になるかもあわせて確認すると、実質的な差額が見えます。
給水元圧が低ければ効果は限定的
繰り返しになりますが、これがもっとも重要な注意点です。元圧が低い住宅では、高圧タイプにしても期待した効果が出ません。見積り前に測定してもらってください。
配管が細いと性能を出し切れない
本体だけ高圧タイプにしても、配管が細ければ流量は制限されます。配管の引き直しが必要かどうかも、現地調査で確認しておくべき項目です。
エコキュートの水圧に関するよくある質問(FAQ)
まとめ|名称ではなく数値と条件で選ぶ
エコキュートの水圧について、押さえるべき点は4つです。
- もともと弱いのは仕様。タンク保護のため減圧している
- 「高圧」の呼び方と数値はメーカーで違う。名称ではなく数値と測定条件で判断する
- 給水元圧が低ければ、高圧タイプにしても効果は限定的。見積り前に測定してもらう
- 急に弱くなったなら別の原因。止水栓、目詰まり、凍結、機器の不具合を疑う
交換を検討する場合は、自宅の給水元圧を測ったうえで、候補機種の流量と測定条件を確認してください。カタログの数値だけでは判断できません。設置から10年以上が経っているなら、寿命の目安とあわせて考えるのが現実的です。
参照した出典一覧
| 出典 | 内容 | 確認日 |
|---|---|---|
| 日立「浴室と台所など同時にパワフル給湯で快適に[水道直圧給湯]」 | 減圧弁方式のタンク圧170kPa、水道直圧給湯との圧力・流量比較、推奨給水元圧 | 2026年8月1日 |
| パナソニック「ウルトラ高圧給湯」 | 高圧・パワフル高圧・ウルトラ高圧の試験条件と流量、機種別のkPa | 2026年8月1日 |
| 給湯省エネ2026事業 公式サイト | 交換時の補助金 | 2026年8月1日 |
| ダイキン・パナソニック・三菱電機・日立ほか 各社公式 | 補修用性能部品の保有期間 | 2026年8月1日 |








